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【動機×手段×正当化】三重大学病院「オノアクト事件」とMRの心理

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手錠と紙幣(出典:写真AC様より)

今日もお疲れ様です。先日の日刊薬業に、アステラス製薬が医学研究に対する寄附金を取りやめて1年が経ちましたという記事が掲載されていました。製薬企業をめぐるマネーには闇が深いだなんて言われることもありますが、本日は寄付金がらみで三重大学病院元教授への寄付金問題についてMRの目線で考えてみたいと思います。

 (目安:3分)

 

 

【目次】

三重大学病院元教授 オノアクト事件とは

経緯

三重大学病院の元教授が、臨床研究にかかる費用の名目で金銭を受領し、増収贈賄の疑いで逮捕された事件です。亀井元教授は、小野薬品営業本部の社員2名から資金提供を受けたという疑惑がもたれています。 また、2018年と2019年に金銭を提供した疑いがもたれ、2020年に事件が発覚しています。

一部メディアでは「使用量が8倍に!」なんていう書かれ方もされています。よくよく読んでみると、単月ごとにオノアクトの試用本数を見た際に、先月よりも今月の本数が8倍に増えていたというようなデータでした。じゃあ年度で馴らしてみたらそうでもないのかな?とも思ったんですが、2017年度までの試用本数が100本前後だったところから2019年度には3,000本オーバーというとんでもない伸び率をたたき出しているので、明らかに「増えている」ということになりますね。

動機×手段×正当化で考えるMRの心理

動機

違法な献金や、売上ありきでの金銭提供はもってのほかです。当事者のMRは逮捕されておりますし、ルール違反を厳しく処罰することが分かってホッとしています。

ルール違反をしてしまった方々を擁護するつもりはありません。しかし、このMRの気持ちが全く分からないわけではないんですよね。彼らの職場環境や営業成績達成のための圧力がどの程度だったのかは分かりませんが、営業職である以上「売り上げを上げなきゃ」という気持ちがあったはずです。大学病院ともなればとんでもなく大きな市場ですし、そうなると情報提供しなければならない医師の数も相当なものになります。

 

そうした状況であれば、「なるべく効率よく多くの医師に使ってもらって実績を上げたい」と思うのも自然な流れかと思います。というか、営業に限らず効率性を高めるというのはどんな仕事でも求められますよね。

「この教授にさえ使ってもらえればいいんだ…」

そうした心理は絶対にあったはずだと思います。

手段

今でこそ製薬会社からの接待や物品提供は厳しく抑制され、日本の商習慣らしい「粗品(ボールペンやボックスティッシュなど)」の提供すら出来なくなりつつあります。

高度経済成長期であれば仕事終わりに先生方と飲み歩き、人付き合いで処方を決めるということもあったかと思いますが、時代は変わりました。

 

そんななかでも"渡せるお金"があります。例えば医薬品関連講演会でご講演頂いた際の講演料や、副作用報告に対する謝礼などですね。医師としての診療行為ではなく、プラスアルファとして製薬企業からの業務を受けたことに対して、製薬会社はお金を支払います。

そりゃあそうですよね。雇用関係になかったとしても業務をお願いしているわけですから。

臨床研究に関する謝礼も含まれるわけですが、そこで目をつけてしまったんでしょうね。

 

「一度に動かせる金額が大きく、即売上実績になるお金があるじゃないか」と。

 

講演料にしても副作用報告にしても、1件あたりの支出は3万円5万円程度で、どんなに高かったとしても10万円強という金額です。かつそのお金を支払ったとしても、確実に売り上げに結びつくかというと怪しいところがあります。医師の側からしても、講演をするためのスライド作成であったり副作用報告に関する書類作成で1件1件時間がかかりますから、

 

「どかんと稼いだ」

 

という認識は無いのではないでしょうか。

 

一方で今回の寄附金については別です。名目上は研究開発のための資金ですので、1件あたりの金額は跳ね上がります。加えて本来は個人の業務に対するお金ではなく組織に対して支払うものです。そこに病院ならではのトップダウン方式に目を付け、

 

「教授に支払って、組織で使ってもらう」

 

という思考に至ったのだと思います。本来であれば製薬会社だけでは開発が進めづらい領域にも投資して新しい治療法を見つけ出そうという目的の寄附金です。正しく使えばすべての人に利益につながるので絶対になくてはならないものなのですが、残念ですね。

 

正当化

大学病院をはじめ基幹病院を担当しているMRは、特有のプレッシャーや責任感を感じています。それは「波及効果を求められる」ということです。

 

少し風邪気味かな?とか、花粉症の薬を貰いに行かなきゃ、といった比較的症状の軽い患者さんは町医者で治療が完結します。そうした場合、使う薬もそこまで強くないので、開業医の判断である程度好きなものが使えます。

一方で病院に搬送されてきたり入院が必要な患者さんについては、命に関わる疾患をお持ちの方もいらっしゃいますから、使う薬もそれだけ強力になります。入院時に処方された薬を退院時に30日分ほど処方して開業医に返してフォローしてもらうという流れが出来上がるわけですね。ここで開業医の目線からすると、

「病院さんで出してもらった薬だから、簡単には替えづらい」

となりますよね。であれば病院で自社医薬品が使われるか使われないかが開業医担当者の売り上げにも影響しますし、営業所全体の営業成績にも響いてくるわけです。

 

営業所の中でも、基幹病院担当者に対してそういった空気感はあります。

 

「〇〇病院は他社品シェアが高いから、厳しいなあ」

 

というような。もちろん表立って「シェアあげてください!」なんて言いませんよ!笑

とにかく、基幹病院の担当者はこういったプレッシャーの中でMRを活動をされております。自分の実績以上に期待されているものがあるなかで、

 

「(この寄附金は)営業所のみんなのために、仕方のないことなんだ」

 

という思いはあったのでしょうね。

まとめ:どうなる?これからの製薬マネー

いかがでしたでしょうか。

世間一般の方からすると製薬会社の活動って目に見えないですよね。医療用医薬品は宣伝されることもありませんし、医師がどうやって薬を決めているかを知る機会も少ないと思います。製薬会社から医療機関にお金を支払うことはたくさんありますが、そのほとんどが真っ当な使われ方をしているんです。ただ見えづらいのでこのような不祥事が1件でも出ると、すべての金銭提供をやめろという風潮になってしまうわけですね。

 

業界団体も透明性を確保するためにいろいろなガイドラインを作成したりしています。ただそもそも研究のための寄附金という考え方が海外の理解を得られていなかったり、日本独自のお金の使い方は今後減っていくものと思われます

 

製薬会社が薬だけで利益を生み出すビジネスモデルも、変わっていくのでしょうね。冒頭、アステラス製薬の記事に少しだけ触れましたが、フィットネスクラブと提携したりヘルスケア事業に力を入れている話題も、よく日刊薬業で目にします。個人的には舵取りが早くていいことだと思います。生活習慣病領域の薬のみではじり貧ですし、医薬品以外の部分にも積極的に投資していく。製薬マネーはそういった形で世に出ていくようになるかもしれません。

 

MR個人としてもそうした多様なビジネスモデルに対応出来る人材にならなければなりませんね。倫理観と志高く、まだまだ自己研鑽に励んでいきますよー。